インターネットの勢いに乗って,さまざまなエンジニアリングの分野が相乗りしたと思う.もっとも表立って見えているのは,実際にサイトを運営しているコンテンツの会社だろう.ほかのビジネスを対象にしたB2Bのコンテンツ会社,一般消費者(コンシューマ)を対象にしたB2Cのコンテンツ会社,また,これらの会社にソフトやツールを供給するソフトウェアインフラ会社,インターネットに接続したり,サーバなどのハードを供給するハードウェアインフラ会社……などが考えられる.そして,通信業者,ハードウェア会社にチップを供給した会社,設計を担当した会社,設計ツールを供給した会社……とさまざまな形で,すべての電子・情報系のハイテク企業が多大な影響を受けた.しかし,ある分野の伸びが低迷していくと,もちろん連鎖反応的にマイナスの影響を受けていった.
そこで,実際にバブルを起こしたのは何だったのか,さまざまな議論が行われているが,それらをちょっとまとめてみたい.
(1) The Great Internet Land Grab:土地の奪略戦
まず,インターネットが物理的に存在する土地のように,「先乗り効果」を見込んだ動きが多すぎた.アメリカには過去,開拓者が土地を自分のものにできるという法案があった.インターネットもそのようにとらえられたのだろうか? インターネットのサイトが,不動産物件のように先乗りすれば良いと思われていた.後からさらに高く売るなり,そこそこの商売をすれば利益が出ると考えられたようだ.また,ブラウザのように無料でばらまいて注目されれば必ず価値が出る……Swarm marketing,群集的マーケティング戦法とも呼ばれた手法で,とにかく注目を得ることや先乗りすることが必須だと考えられた.ここで,無理にユーザーを呼び込むため,無謀ともいえる額の広告宣伝費が使われた.あるコンテンツ系の会社では,日本円で70億円ほどの資金調達を行い,そのうちの70%を広告費に費やしたという.サイトにユーザーを呼び込むために,URLを目立つところにドンドン出したということだ.
(2) 通信業界の自由化がもたらした供給過剰
AT&Tの分割から始まって,アメリカの通信業界はどんどん自由化されてきた.インターネットが普及し始めた1990年代半ばには,これがピークに達した.長距離電話以外にローカル電話も自由化されることになったり,ワイヤレス業界の電波帯域の入札などが行われた.当時は,さまざまな新しいサービスが次々に紹介され,それらが安価で供給されると想像されていた.
しかし,実際は期待したほどの需要がないか,コスト的に見合わない,または似たようなサービスが多いなどの理由で,ビジネス的に成り立っていない.これにより,期待をかけて投資したものの,供給過剰な状態になっている.通信業者が敷いた光ファイバや買い込んだサーバが,使われずにそのままになる例が多いという.
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