しかし,レイオフや倒産ばかりの悪い話だけでもないようだ.テロはシリコンバレーのハイテク企業にさまざまなニーズやビジネスチャンスを呼び込んでいる.たとえば,前述のテレビ会議システムやリモートアクセス系のソフトなどがあげられる.
また,荷物検査システムなど,警備系のニーズも多くなると予想されている.医療機器の応用で,CTスキャンを荷物検査に使うシステムを作っている会社などがある.また,テロの犯人達が偽名で飛行機に搭乗していたことから,国民IDカードの構想が持ち上がった.何らかのバイオメトリック(指紋,眼中網膜,手のひらなど)を併用した,偽造が困難なスマートカードと照合システムを無料で開発すると,アメリカ連邦政府に対してオラクルCEO/会長のLarry Ellison氏がテレビインタビューで提案していたぐらいだ.実際は,人権の観点や政治的なこともあるのでどうなるかは不透明だが,シリコンバレーの会社に期待がかけられているのはたしかだ.ちょっとまとめてみると以下のようになる.
1) 通信
・テレビ会議システム
・リモートアクセスソフト,クロスプラットホームアクセス
・ワイヤレス通信(テロ事件で携帯電話による通信がニュースでも大きく取り上げられたが,一般市民の携帯電話加入が増えている.また,Globalstarのような衛星電話の加入も増えている)
2) セキュリティ・警備
・ネットワークを守るタイプのソフトやサービス全般(暗号化システム,FireWallなど)
・バイオメトリックセンサおよび認識/照合ソフトなど
・スマートカード
・爆発物,危険物を発見する装置
・細菌兵器テロ対応のセンサ(高速DNAサンプル認識システム)
3) 軍事関係すべて
・諜報関係(監視衛星,暗号解析など)
・兵器
4) その他
・航空機機内(コックピットドアの新素材,機内監視システムなど)
・バイオテック(細菌兵器テロ対応ワクチンの開発など)
以上で共通するのが,センサ類のハードとソフトを組み合わせたシステムや,何らかのネットワークを介したアプリケーションが多いことだ.また,開発TAT短縮とコストを下げるために既存のコンポーネントやサブシステムを利用する例が増えている.少し昔だと軍事用の製品は専用コンポーネントが当たり前だったが,これも時代の流れで変わりつつあるようだ.
組み込み設計やセンサ類を使ったディジ-アナ設計,ホストシステム(PC,UNIX類)とのインターフェースに強いエンジニアが求められると考えられる.さらに,これらのシステムをサポートするために,高速なメモリ,CPU,RTOSなどの需要も増えると考えられる.シリコンバレーのエンジニアの需要がこれからも見込めると思う.その他,意外と日本の技術や技術者が知らずにサブシステムの開発に関わっていたということも考えられるだろう.
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