次のVisual Studio


 Visual Studioは,.NET構想に含まれる部分が大きく拡張されるようで,現在公開されているだけでも以下のような拡張が行われる予定になっています.

XML
 本年の2月1日に,マイクロソフトのWebサイトで,XMLスキーマからVisual Basicクラスを生成するジェネレータが公開されました.

 これはある種のコンバータですが,XMLによるスクリプトの実行をコンパイラに変換し,VBAに移行するための手助けになるように思います.VBAのクラスとして利用できるということは,ActiveXのクラスへの変更などを行うことで,他言語からXMLを利用するといったことも考えられます.

SQL,COBOL
 現在のインターネットは,静的なデータから動的なデータへ,それもリアルタイム性のあるネットワークへと拡張されている過渡期ともいえます.

 DHTMLやXMLのようなHTMLを拡張したタグ形式スクリプト,既存の言語を簡略化したJavaScriptやVBScriptなどが,「初心者でも扱いやすくした言語」という意味から「データベースの参照などを行う言語」へと変わってきているのは明らかでしょう.しかし,ネットワーク技術の複雑さやネットワークサーバの維持に金銭的・人的なコストがかかることから,普及に時間がかかっていることも事実です.

 筆者は,ネットワークデータベースの重要性とその複雑さなどを学生時代に学び,インターネット上を流れるリアルタイムデータベースに興味をもちました.当時はネットワークもマシンも非力なものだったので,ネットワークデータベースは少々のことでも過大な負荷をシステムに与えてしまうということを身をもって体験しました.

 しかし,ネットワークもマシンも進歩し,かつてCOBOLによって蓄積されたソフトウェア資産や,SQLによるデータベース参照などが,ネットワークを介しても十分に活用できるほどになっています(SQLやCOBOLは今でも非常に多くの場所で使用されている).

 そのため,次のVisual StudioではCOBOLをサポートするためにVisual FoxPro(図3)が搭載される予定になっています.

〔図3〕Visual FoxPro

 

 (約87Kバイト)

ATL+ with Visual Basic
 Windows2000では,ActiveDirectoryサービスやCOM+サービスなど,根本的な改善が数多く行われました.今までは,たとえばネットワークプログラムなら,Winsockなどを扱う低いレイヤのプログラミングが必要とされ,それぞれに応じた規格やAPIを学ばなければなりませんでした.

 しかし,OLEやCOMを経て共通インターフェースとして扱われるようになり,ATL(Active Template Library)のようなテンプレートライブラリによってBasicのような高級言語でもWindows DNA(Distributed interNet Application)にのっとった多くの拡張機能が簡単に利用できるようになってきました.

 Basicというとアプリケーション開発言語であり,システムプログラミングなどは無理だと考えられていましたが,今ではDOSの頃とは違って,オブジェクト指向に「近い」言語になってきているので,「Basicの簡便さでシステムプログラムが組める」という認識に変わりつつあります.
 次のVisual Basicでは,次に挙げるような項目が追加されます.本稿を執筆している7月末現在,これらの機能に関しては発表されていませんが,Visual Basic以外の言語製品においてもサポートされると考えられます.

▲ASP+とWeb Forms
 FrontPageなどのHTML編集ソフトを利用しているユーザーは多いでしょう.FrontPageやVisual InterDevなどのツールでは,JavaScriptやActiveXなどを簡単に利用できる手段が提供されていますが,この傾向がさらに進められ,ASP+とWeb Formsによるコンポーネントの開発が強化されます.その結果,次のような利点が得られます.

(1) サーバにHTMLページを生成させるためのプログラミングモデルと実行フレームワークを実現
(2) HTMLページの背後で動作するコードが実行ファイルにコンパイルされ,実行時のパフォーマンスが向上する
(3) HTML(3.2)のページが生成され,どんなプラットホーム上のどんなブラウザでも表示できる

▲ Web services
 XMLで記述することにより容易にネットワーク間オブジェクトの利用が進み,さらにSOAP(Simple Object Access Protocol)注1 のサポートによりファイアウォールを利用したデータの通信が拡張されます.

(1) HTTPをトランスポートとして利用し,リモートからのメソッド要求が企業のファイアウォールを通過することを可能する
(2) セキュリティのために,標準的な認証方式だけでなく,Secure?Sockets Layer(SSL)プロトコルがサポートされる
(3) 特定のコンポーネントテクノロジやオブジェクト呼び出し規則に拘束されず,プログラミング言語やコンポーネントモデル,OSを選ばずWeb Servicesにアクセスすることができる
(4) SOAPインターフェースが採用される 


注1:SOAPとは,ファイアウォールが存在している状況で使用できるように設計されたクライアントとサーバ間のRPC(Remote Procedure Call)を可能にする分散オブジェクトプロトコル.


Copyright 2000 広畑 由紀夫

コラム目次
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Engineering Life in Silicon Valley 第79回 フリー・エンジニアという仕事(第一部)
移り気な情報工学 第36回 時代間通信アーキテクチャ
フリーソフトウェア徹底活用講座 第14回 GCC2.95から追加変更のあったオプションの補足と検証(その3)

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フリーソフトウェア徹底活用講座
第13回 続々・GCC2.95から追加変更のあったオプションの補足と検証
第12回 続・GCC2.95から追加変更のあったオプションの補足と検証
第11回 GCC2.95から追加変更のあったオプションの補足と検証
第10回 続・C99規格についての説明と検証
第9回 C99規格についての説明と検証
第8回 C言語におけるGCCの拡張機能(3)
第7回 C言語におけるGCCの拡張機能(2)
第6回 GCCのインストールとC言語におけるGCCの拡張機能
第5回 続・C言語をコンパイルする際に指定するオプション
第4回 C言語をコンパイルする際に指定するオプション
第3回 GCCのC言語最適化以外のオプション
第2回 GCCの最適化オプション ――Cとアセンブラの比較
第1回 GCCの最適化オプション

移り気な情報工学
第36回 ITもの作りの原点
第35回 ビットの化石
第34回 ユビキタスなエネルギー
第33回 ロゼッタストーンとWWW
第32回 情報家電のリテラシー
第31回 草の根グリッドの心理学
第30回 自分自身を語るオブジェクト指向「物」
第29回 電子キットから始まるエレクトロニクス
第28回 映画に見る,できそうでできないIT
第27回 ITも歴史を学ぶ時代
第26回 1テラバイトで作る完全なる記憶
第25回 日本はそんなにIT環境の悪い国なのか
第24回 10年後にも生きている技術の法則
第23回 ITなギズモ
第22回 ブロードバンドネットワークに関する三つの質問

Engineering Life in Silicon Valley
第78回 インドに流れ出るシリコンバレーエンジニアの仕事
第77回 エンジニア達の健康管理・健康への努力(第二部)
第76回 エンジニア達の健康管理・なぜエンジニア達は太る?(第一部)
第75回 ユーザーインターフェースのスペシャリスト(第二部)
第74回 ユーザーインターフェースのスペシャリスト(第一部)
第73回 放浪の旅を経てエンジニアに……
第72回 凄腕女性エンジニアリングマネージャ(第二部)
第71回 凄腕女性エンジニアリングマネージャ(第一部)
第70回 ビジネススキルを修行しながらエンジニアを続ける
第69回 専門分野の第一線で活躍するエンジニア
第68回 シリコンバレーに夫婦で出向(第二部)
第67回 シリコンバレーに夫婦で出向(第一部)
第66回 目に見えないシリコンバレーの成功要因
第65回 起業・独立のステップ
第64回 インターネットバブルの前と後の比較
第63回 日本でシリコンバレースタートアップを体験する(第四部)
第62回 日本でシリコンバレースタートアップを体験する(第三部)
第61回 日本でシリコンバレースタートアップを体験する(第二部)
第60回 日本でシリコンバレースタートアップを体験する(第一部)

フジワラヒロタツの現場検証
第72回 現場検証,最後の挨拶
第71回 マイブーム
第70回 OSぼやき放談
第69回 技術者生存戦略
第68回 読書案内(2)
第67回 周期
第66回 歳を重ねるということ
第65回 雑誌いろいろ
第64回 となりの芝生は
第63回 夏休み
第62回 雑用三昧
第61回 ドリームウェア
第60回 再び人月の神話
第59回 300回目の昔語り
第58回 温泉紀行
第57回 人材ジャンク
第56回 知らない強さ
第55回 プレゼン現場にて


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