筆者は,さまざまな国のエンジニアと仕事をする機会があったが,シリコンバレーのエンジニアにはたしかに独特の雰囲気がある.とにかく情報収集が好きだし,話題や情報も豊富にもっている人が多い.これはやはりアメリカの職場の環境の特徴なのだろうか.自分のストックオプションや401K個人年金の運営が個人の責任なので,あまりビジネスに興味がなくても,自分の会社の業績や株式市場に敏感になることが多いからであろう.年金や投資信託,そして自分の会社の持ち株会(ESSP:Employee Stock Purchase Plan)など,あらゆる場面で株式市場の知識が必要とされる.少なくとも自分の貯金や財務運営などには必須なので,嫌でも少しずつ身に付けていくようだ.
それにとどまらず,本格的に興味をもつエンジニア達もまた多い.そして会社の業績を発表しているプレスリリースにしっかりと目を通したり,それによる業界紙やウォール街の反応を細かくチェックすることが当たり前となる.アニュアルレポートの内の財務報告書もしっかりと読めて,経理・財務に詳しいエンジニア達も多い.社外の第三者的存在からの会社の評価や,将来性の情報を集めているわけだ.
また,たいていのシリコンバレーの企業では,社員にオーナー的精神と運命共同体であるという意識を感じてもらうために,社内に情報をかなりオープンにしていることが多い.社内向けの業績説明会やデータの発表が頻繁に行われる.かなりオープンな会社であれば,この種の情報で自分の仕事と業績がどのように直結しているか,かなり理解を深めることができる.
以前に筆者の勤めたことのある会社では,だいたい四半期ごとに事業部全員を集めて説明会があった.朝食まで用意してくれて,情報開示以外にその四半期の各部署の社員表彰式の場などに使われており,2〜3時間は使ったけっこうなイベントだった.社員全員が株主なので,ミニ株主総会のような感じで,上層部による質疑応対もていねいに行われる.最近聞くところによると,Webキャストなども使われているようだ.これによって,社内と社外でピックアップできる自社の評価でエンジニア達は自分の勤めている会社について判断することが多い.しかし,矛盾があったり,社外の評価があまりよくないと,やはり転職を考えるという方向に考えが向いていくようだ.会社を辞める/辞めないはさておいて,ビジネス的な基本知識やベースとなる決算書の解読方法などを確実に身に付けられるのだ.
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