ネットワーキングの一つのおもしろ味は日常の仕事以外で付き合いのない会社の人達や,まったく職種の違う人達と出会うことだ.スピーチやイベントの内容によって共通なテーマがあるから,知らない人と話すにも一応は同じテーマに興味があるので,それから話をつなげていけば良い.筆者が定期的に参加するネットワークのイベントは,ベンチャ企業をサポートする弁護士事務所やベンチャ・キャピタルの人達が参加することが多い.ベンチャ企業を起こすことをもくろんでいる人達と知り合うためには,地道に人脈を作らなければならない.彼らにとっては将来への営業活動も兼ねている.しかし,今日明日に何かあるわけではないので地味で気長な活動だ.
同じようにコンサルティング会社や人材斡旋の人達もよくイベントに参加する.業界の情報収集をかねた営業活動だ.テーマによってはまったく違う業界について触れることができる.筆者が利用するネットワーク会議でバイオテックがテーマであったりしても,すべてがわからなくても,行ってみるとなかなか勉強になる.転職を考えているエンジニアなども,じっくりと情報収集できるのでよく利用する.
このように,それぞれの人の目的が何らかの形で一致して集まりができていく.さまざまな業種や企業の上から下まで参加していておもしろい出会いがあると,そのグループ主催のイベントがどんどん人気になり,またそれが人を呼ぶ.どんなにインターネットや電子メールが発展しても実際に会って話ができ,生きた情報交換ができるネットワークのイベントは根強い人気をもつ.最近では,Linked IN,Orkut,Greeなどのビジネス・マンの人脈作り用出会い系サイトが話題になったが,使った人に聞くと,一度登録してしまうと,その後は何もすることがないので放置されてしまうという話だ.やはり定期的に飲食したりせめて会って立ち話ができるとやはり違うようだ.
起業したり,これからスタート・アップを作る人達に,よく先人・先輩の知恵として贈られることばに,「自分の周りを,自分よりもっと賢い人やできる人で固めなさい」というのがある.簡単そうなことばであるが,なかなか奥が深くておもしろいフレーズだと思う.起業を志す人達はまず自分の周りにどんな人がいて,何をしてくれるか考える.シリコンバレーのスタート・アップというと我の強い人達がガリガリ働いているというイメージがあるが,意外とチームで仕事を行っているという意識が強い人が多い.だから,自分の知らないことや不得意なことを補うために,さまざまな人と知り合いになっておくことの大切さをよく理解しているのだと思う.そういう意味で個人それぞれのネットワーキングは大切なスキルだ.
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