起業するなり独立するなりで,いちばん始めに皆が直面するのが「何をやってお金もうけをするか?」というポイントではないだろうか.さまざまな考え方があるが,やはり自分の今やっている仕事の延長線や現在の仕事に近いこと,またはその応用が現実的だろう.
たとえば筆者の知り合いで,その昔はRTOSの会社に勤めていたエンジニアがいる.8年ほど前に独立して,フリーでプログラミングの仕事をしていた.きっかけはサポートをしている客先が忙しいときに,プログラミングを手伝ってほしいというバイトの話があったという.サポートの領域をはるかに超えている内容だし,勤めている会社では副業を禁じられているので,当初は断ったそうだ.もっとも彼はRTOSの会社に勤めているからこそ自分の価値があると思っていて,会社を離れて一人で仕事をするとあまりメリットがないのではないかと自分を相当疑ったようだ.
しかし,同じような話がほかの企業からもあり,仲の良い顧客と話をする中で,自分のスキルは独立してもかなり使えるという感触を得たようだ.実際,独立してからは,前から付き合いのあった顧客から仕事を貰っている.顧客側も安心して仕事を出せる先があるし,彼としても安定して仕事が来るという構図になっている.
自分が普通にやっている仕事が,外から見ると意外に大事で価値があるというケースだ.また,辞めた会社からも仕事を紹介されるケースもあったそうだ.彼の場合は,謙虚なタイプだったので必要以上に自分を過小評価していたようだ.はじめの1年目は顧客からお金を取るところでだいぶ苦労したと言っていた.
さらにもう1人の知り合いは,プログラミングが3度の飯よりも好きで,いつも自宅に最新の開発環境をもっていたり,新しいプラットホームでのプログラミングに興味をもっている人だ.彼の場合は自分の立ち上げた会社の仕事以外に常に4〜5個ネタを練っていて,暇さえあれば自分のアイデアを試すためのプロトタイプを作ったりしている.ジャンルはさまざまで,シミュレータからJavaで書いたWeb上アプリケーションまである.
彼は機会さえあれば,その道に詳しい人に自分のプロトタイプを見てもらったりして,ビジネスにするチャンスをうかがっている.実際にビジネスとしていくつか立ち上げているが,彼はネタ作りが好きなようで,製品化には向いていないと自分でも言っている.パートナを数名集めては立ち上げて,軌道に乗るとまた次のネタ作りをするようだ.ネタの中には,話にならないようなものもたくさんあるが,彼の場合は「数撃てば当たる」鉄砲的な考え方なのだろうか? 上場するような大きな会社にはまだ化けていないが,地道に製品を作っているともいえるし,自分の好きなことなので長続きしているのだと思う.
これらの二つの例でいえるのが「エンジニアはエンジニアらしい仕事で勝負」というところではないだろうか? 逆に新しいビジネスモデルや複雑なライセンス形態で起業をして,勝負に出た人がいる.かなり派手に投資家も集めた.しかし,お金のやり取りや,何をビジネスのネタにしているかが非常に理解しにくい会社であった.今から振り返ると,彼が起業したときはインターネットバブルのときなので,ある種の流行だったのかもしれない.今でも会社は続いているが,複雑なビジネスモデルのため苦戦しているのはたしかだ.
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