ポルトガル国内では何ができないのか,ハードウェア・エンジニアとして調べてみた.筆者のリサーチの結果,次のことができないことが判明した.
(1) 手作業エッチング以上(つまり機械での)基板作成
(2) メタル・マスク作成
(3) BGAパッケージの実装
(4) LSIの量産
まず,基板に関しては不可能に近い.2層(部品面/はんだ面のみ)の手作業でのエッチングはやってくれる店があるが,4層基板は無理である.では,どこに頼むかというと,ドイツに発注をかけることが多い.しかし,輸送コストと物価の違いが大きいので,ポルトガルでハードウェアを量産しようとする会社は皆無に近い.
QFP部品までの実装とテスト,パッキングまでを行ってくれる会社はあるにはある.しかし,はんだペースト用にメタル・マスクは事前に用意する必要がある.一方で,メタル・マスクはポルトガルでは作れない.LSIに関しては,INESC(日本で言うところの産業総合研究所)に唯一,小さなクリーン・ルームをもつが,企業による量産体制はない.したがって,IPを売る会社はあるが,ポルトガル製のLSIチップを売る会社は存在しないといえよう.
徐々にではあるが,ポルトガルは先進国としての力を蓄えてきており,人とモノの往来が激しくなっているように感じる.昨年のサッカー・ヨーロッパ選手権の開催国としても成功を手にし,そのときのポルトガル首相は現EU議長である.
ポルトガルが国家として高い地位を築きはじめている今,エンジニアから見るこの国に足りないものは,IT向け開発リソースである.日本のように「超特急」などの基板作成サービスを始める会社が現れるような規制緩和や補助金の施策を期待してやまない.
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