今回RMI社が今までのプロセッサの世界を変えようと,満を持して発表したチップは,XLRというスレッド処理に重点を置いたマルチコア・プロセッサです(写真2).
XLRチップは8個のMIPS64アーキテクチャのプロセッサが90nmルールの約15mm角のダイに載っています.各コアは四つのスレッドが同時に処理ができるようになっています.理論上は32個のスレッドが同時に処理できることとなります.
どちらかというとパソコンやゲームのような,浮動小数点演算を多く含む種々の形態のプログラムが走る用途より,サーバなど固定小数点演算が比較的多い高負荷用途に向いていると思います.
チップの写真を見れば何となく理解できますが,2MバイトのL2キャッシュと1.5GHzで動くプロセッサがチップ面積の大部分を占めています.さらに,リング状に構成されているメモリInterconnectがL2キャッシュと各コアの間のデータをやりとりするので,L1データ・キャッシュと思われる部分と密接に配置されています.
メモリInterconnectは最大48Gバイト/秒というデータの転送速度をもつことで,マルチスレッド処理に必要なデータの高速供給を保証しています.もちろんメイン・メモリもここに接続されています.
ネットワークやセキュリティ・エンジンにつながるI/O側も各コアに隣接する同じ原理のI/O Interconnectが使われています.RMI社ではチップ上の配置もチップの製造側に任せずに,極力自社の技術陣で検討したそうです.
細かいアーキテクチャが公開されていないので,正確なことは言えませんが,汎用チップに比べて,この各コアに四つのスレッドが組み込まれているとすると,命令セットはある程度限定されていると言えます(図2).
さらに,ほかの特徴としては,図2からもわかるようにRSAなどの暗号処理をハードウェアでもつことにより,セキュリティ処理でのプログラムへの負担を下げていることです.
XLRチップはL2キャッシュのサイズやプロセッサの数でいくつかのモデルが同時に提供されますが,すべてピン・コンパチブルなので,チップの交換だけで性能の向上をはかることができるとのことです.
RMI社はXLRチップの外に,ルータなどのSONET/SDH水準のネットワークをターゲットに置いたOrionチップを発表しています.こちらは,XLRチップがビジネスとして立ち上がるまでRMI社が企業として成り立つ助けになるようです.
Orionチップは130nmルールで作られています.このチップは最近まで複数のチップで実現してきたことが多かったルータなどを,ほとんど1チップで実現できるそうです.
このチップは,安価なルータなどの組み込みチップに使うにはちょっと牛刀気味のところがありますが,Cisco Systems社などが出している高性能なブロードバンド・ルータなどの用途には威力を発揮しそうです.
RMI社では,このほか先行開発されているMIPS64アーキテクチャ単体のLRチップ,ネットワーク用のPegasusチップをすでに発表していますが,今回の二つのチップが出るまでのつなぎという理解です.
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