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第6回 組込みシステム技術に関するサマーワークショップSWEST6

■日時:2004年7月22日(木)〜23日(金)
■場所:遠鉄ホテルエンパイヤ(静岡県浜松市)
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 現場で働く組み込み技術者向けに毎年一回開催されている「組込みシステム技術に関するサマーワークショップ SWEST6」が浜松湖畔で開催された.今年で第6回を迎えるSWESTだが,昨年と同様に講演,セミナ,ポスターセッション,参加メンバによる討論会だけでなく,今回はメンバによる小型ロケットの打ち上げが行われるなど,充実した内容の二日間であった.SWEST6と同時に「最新のLSI設計技術および,DA(デザイン・オートメーション)技術の発表と討論会 DAシンポジウム2004」も開催され,こちらの多くの参加者を集めていた.今回のレポートでは,SWEST6を中心に会場のようすをお伝えする.

●ステアリング委員長 高田氏による挨拶

SWEST ステアリング委員長の高田 広章氏の写真

SWEST ステアリング委員長の高田 広章氏

 SWEST ステアリング委員長の高田 広章氏(名古屋大学)の開催挨拶では,昨年のSWEST5では通常の研究発表をとりやめてポスターセッションにしたことにより,参加者が興味のある発表を重点的に見て回れるだけでなく,発表者と参加者の会話によるコミュニケーションが行えた点が成功であると評価し,今年も同様の形式にするとのことであった.また,討論などにも積極的に参加し「頭を刺激する場にして欲しい」とも語ったと同時に,今年は参加者数が170名を超える大規模なものになったとの発表もあった.

●JAXA奥田氏による招待講演「宇宙機搭載のソフトウェア」

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の奥田 一実氏の写真

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の奥田 一実氏

 続いて宇宙航空研究開発機構(JAXA)総合技術研究本部 情報技術開発共同センター 奥田 一実氏による「宇宙機搭載のソフトウェア」がSWEST/DAシンポジウム共同招待講演として行われた.

 招待講演では,宇宙機で用いられるアビオニクス(aviation+electronics;航空用電子工学)の概要が説明されたうえで,「宇宙機ではクリティカル・システムが求められるが,宇宙機で使用される組み込み向けOSや開発環境は,通常の組み込みシステムでも役に立つ」とし,宇宙機の技術の有用性について強調していた.

招待講演のようすの写真

招待講演のようす

 クリティカル・システムとは何だろうか? 講演の中で奥田氏は,「非常に高い保証が求められるシステム.しかも大規模かつ複雑であることが多い」と定義していた.宇宙機では安全性・信頼性・保全性(修理/交換の容易さ)が求められ,無人機では二重の冗長性,有人機では三重の冗長性をシステムに持たせることにより,高い安全性・信頼性を保証しているとのことであった.

 海外の事例では,スペースシャトル・チャレンジャー事故の後のNASAの対策として導入された「ソフトウェア独立検証及び有効性確認(IV&V;Software Independent Verification and Validator)」が紹介された.これはソフトウェアの開発とライフサイクルを通じて,予算的・組織的・技術的に独立にVerificationとValidationを行うというものだ.現在のNASAでは,IV&Vのための独立した組織を設け,検証・評価を実施しているとのことだった.

 また,これまでの宇宙機用のRTOSとしては,宇宙機メーカが独自に開発したスケジューラ(スケジューリングに特化したOS未満の機能をもつもの),VxWorksなどの市販RTOS,宇宙機関連メーカが開発したRTOS(μITRONなど)が用いられていた.しかし,今後よりクリティカル・複雑な機能が要求され,市販RTOSの技術情報の入手が困難なケースが増加したことなどから,フリーなμITRON実装であるTOPPERSを宇宙用耐放射線性MPU(MIPSベース)へと移植し,IV&Vの手法も取り入れつつ高信頼性RTOSとして開発環境を整備していくことなどを明らかにした.

● ポスターセッション

TOPPERS/OSEKのデモの写真

TOPPERS/OSEKのデモ

 基調講演の後には会場を移し,ポスターセッションが行われた.(株)ヴィッツのTOPPERS/OSEKは,ヨーロッパの車載用OS,OSEKをTOPPERSプロジェクトにて実装したもの.展示デモでは車の模型を動かしていたほか,ゲームボーイアドバンスへも移植し,注目を集めていた.

● ロケットの打ち上げ――サーベイヤ計画

最終調整を行う二上氏の写真

最終調整を行う二上氏

 二日目の早朝,SWEST6の目玉である模型ロケット「Hamana1」の打ち上げが行われた.まずはその模様をご覧頂きたい.

打ち上げ直前のロケットの写真

打ち上げ直前のロケット

 打ち上げのようす(.AVI形式)

 この打ち上げは「組み込みシステム開発のリアルな教育教材を開発しよう」をスローガンとした「サーベイヤ計画」の一環として行われた.ロケットにはGPSが搭載され,AVRマイコンを使って取得した位置データをEEPROMに書き込むことにより,航路を記録するというシステムになっている.打ち上げは無事成功し,データの取得も行えたという.

 午後のチュートリアルでは,サーベイヤ計画代表の二上 貴夫氏〔(株)東陽テクニカ〕により,同計画の趣旨説明と結果報告が行われた.その中で二上氏は「組み込みシステムはソフトやハードの製作だけでなく,実環境でのテストや雑務なども含めたトータルなものであり,しかも実際には思いもかけないトラブルが発生する.これらも含めて管理するのが組み込み開発である」とし,組み込み開発という言葉の意味する幅広さを強調していた.ロケットの打ち上げにおいては,当初FPGAでシステムを実現しようとしたが,物理的にロケットに入らないという理由でAVRマイコンに変更されたという経緯や,ロケットの打ち上げに先立って消防署などへ連絡すること,打ち上げ時刻は凪の時間帯が良いという調査など,さざざまな事項を考慮し問題を解決することによって成功に結びつけたという経緯も明らかにされた.同時にGPSの取得データも公開され,水平方向に関してはデータの取得に成功し軌跡を表示できたが,高さ方向に関してはGPSが高さ方向への高速な移動に追従せず,正確なデータが取得できなかったとしていた.

● 分科会――プロセッサアーキテクチャとリアルタイムシステム

 分科会「プロセッサアーキテクチャとリアルタイムシステム〜ハードリアルタイムシステムにキャッシュを使うの?〜」は,冨山 宏之氏(名古屋大学)と高野 裕之氏(東芝セミコンダクター)をコーディネータに座談会形式で行われた.近年の32ビットRISC CPUにはキャッシュが搭載されており性能向上のために使用したいのだが,ハードリアルタイム・システムにおいては最悪実行時間(WCAT)の見積もりが難しくなるという問題が存在する.これを回避するためにはキャッシュのプリフェッチであらかじめすべてのコードとデータをキャッシュに置いてしまう,キャッシュよりも高速な内部SRAMなどに置いたほうが予測がしやすいなど,さまざまな角度からの発言があった.

 また,リアルタイム・システムの構築においては,「そもそも本当にハードリアルタイムが必要とされる部分は少ないのでは?」という指摘もなされた.本当にハードリアルタイムが必要な部分はシステムのごく一部で,その部分だけを別のCPUやハードウェアで実行し,(通常の処理である)ソフトリアルタイム部分を同じCPU上に共存させないようなシステムが現実解という意見もあった.


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