第34回
〜対談編〜
サマージョブでゲーム業界に入る
今回のゲストのプロフィール
Natalie Burgess (ナタリー・バージェス)
中国系アメリカ人,ハワイ州ホノルル出身.1985年University of California Berkeley校(UC Berkeley)の電子・情報工学部卒業. Atariや3DOなどのゲーム業界を経て,現在はハードディスクで著名なQuantumにソフトウェアエンジニアとして勤める.7歳と8歳になる娘の教育熱心なお母さんでもある.
変わりゆくゲーム業界
その頃のグラフィック処理は,どういうプログラミングでしたか?
アニメーションエンジンのソフトを作りましたが,基本的にハードがまだ遅い時代ですから,画像は2次元ですね.3次元に移行するまで長く使われていましたよ.だから,グラフィクスを扱うといってもルックアップテーブルでsin/cosを扱ったりシフトレジスタを使うぐらいですね.浮動小数点演算を使うのは3次元になってからです.
なるほど,それほど数学的ではなかったのですね.
結局,7年ほど勤めました.その後,短い期間ですが一時期ゲーム業界を離れて,医療機器のプログラミングをしていました.ゲームと違ってリアルタイム的な要求はなく,比較的簡単なプログラミングだったんですが,人命に関わる産婦人科のベビーモニターシステムだったので,テストやドキュメンテーション,システムを使う看護婦さんのトレーニングなどが,新しいチャレンジでした.でも,結局ゲームが恋しくなって3DOに行きました.
なるほど,この頃になるとハードのパフォーマンスもだいぶ進歩していましたよね?
ドライビングゲームを担当させてもらいました.私の個人的なお気に入りです! でも,プロジェクトが終わって一段落してから次のゲームに関するマーケットリサーチをしたりしていて,とても困ったことに気づいたのです.
困ったこととは?
ゲーム業界がバイオレンス系にシフトしていたことに気づきました. この頃からDoomなんかがすごい人気になり始めたのです.個人的に,シューティングゲームで人が死んだり,血が多いゲームはダメなんですよ.それに,自分の感性がティーンの男の子達とかなりかけ離れていることに気づきました.メインのお客の心がつかめていないとまずいと思い,違う業界を考えてみることにしました.そして,現在の職についています.
日本は奇麗,食べ物が美味しい!
現在のお仕事は,ハードディスクのテストプログラムを作ったりすることですか? 日本に行くことも多いとか?
そうですね. そのほかに,仕事に必要なツールを作ったりします. やっとハード寄りのプログラミングができて嬉しいです(笑).基本的にCとC++を使います.ツール系にはPerlやJavaも使っています. 工場が四国にあって,日本によく行きます.年に少なくとも6回は行きます.一度に2〜3週間ぐらいの滞在です.
かなりハードなスケジュールですね.日本の印象は?
関西国際空港(関空)から四国に行くので,四国以外の日本をあまり訪れたことがないのですが,四国は本当に奇麗ですよ.海あり山ありだし.シリコンバレーみたいにフリーウェイとか建物だけで殺伐とはしてないんです.私がハワイ出身だからかもしれないですね.海が奇麗でないとね… .あとは,食べ物が美味しい.それに日本人の皆さん親切ですよ.かなりよい仕事環境で,コンピュータもひととおり四国の工場にあるので,ラップトップとか持って行かなくてよくて楽です.旅行が多い職種のせいか,既婚者が多いですね.やっぱり家族の支援がないと,こういう仕事は長続きしないと思うんですよ.
女性や母親から見た エンジニアの世界
女性としてエンジニアリングや技術分野にいることについて話していただけますか?
私のグループは全体でエンジニアが40名ほどなんですが,その中で4名が女性です.これは多いほうだと思います.そのほかは,財務関係の副社長が女性で,あとはマーケティング担当などに女性が多いですね.まあ,ゲームよりは落ち着いた業界なので既婚者や子持ちの女性が多いし,年齢層も高いのでそれぞれの生活を意識してくれるので楽です.ほかの業界ではそうはいかないかもしれません.ソフトウェアエンジニアは,母親業と両立しやすいと思います.
教育ソフトへの想い
今後は,ゲーム業界に戻るつもりは?
ないですね.個人的に興味をもっているのは,教育ソフトです.自分が母親になったせいもあるのですが,もともと教育学に興味をもっていました.UC Berkeleyの一般教養や選択科目は,ほとんど教育学関係のクラスを受けていました.一時期エンジニアをやめて教師になることも真剣に考えました.
そうだったんですか….私は一般教養・選択科目で経済学とアジア学注3をやってましたが.
子供一人一人の学ぶスピードがまったく違うし,切り口もまったく違う.だから,コンピュータやソフトウェアをそれぞれの子供に合わせてカスタマイズすることは,おおいに可能なんです.しかし,残念ながらまだまだ教育ソフトの世界はどうやってお金もうけをするか先が見えないですよね.出版社に買われるのならまだ良いのですが,玩具メーカーに買収されているケースがほとんどで,先がどうなるやら….アフタースクール系のチェーンでScore!注4が成功しているぐらいでしょうか? とりあえずようすを見るしかないですね.
トニー・チン htchin@attglobal.net WinHawk Consulting
copyright 1997-2001 H. Tony Chin
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移り気な情報工学 第62回 地震をきっかけにリアルタイム・システム再考
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◆フジワラヒロタツの現場検証 第72回 現場検証,最後の挨拶 第71回 マイブーム 第70回 OSぼやき放談 第69回 技術者生存戦略 第68回 読書案内(2) 第67回 周期 第66回 歳を重ねるということ 第65回 雑誌いろいろ 第64回 となりの芝生は 第63回 夏休み 第62回 雑用三昧 第61回 ドリームウェア 第60回 再び人月の神話 第59回 300回目の昔語り 第58回 温泉紀行 第57回 人材ジャンク 第56回 知らない強さ 第55回 プレゼン現場にて
Copyright 1997-2005 CQ Publishing Co.,Ltd.
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